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【「戦争と芸術」展(Ⅰ~Ⅳ)の経緯と開催主旨】

2009年11月11日

 

 本展第一弾(2007年1月10日~2月2日開催)では、防衛省の協力によって藤田嗣治の戦争画《南昌新飛行場爆撃ノ図》の出品が実現した。そして現代美術作家の横尾忠則杉本博司宮島達男神谷徹を交え、さらに長崎天主堂の被爆した聖像立命館大学国際平和ミュージアムの協力によって併せて展示した。この展覧会は、政治・経済の枠組みに止まらず、芸術的視点に立ったアプローチによって、「戦争と芸術」の関係性とそこに横たわる様々な問題を浮かび上がらせる試みであった。タブー視されていた戦争画を取り上げることで各方面からの注目を集め、国内外からも多大な反響を得た。副題の「美の恐怖と幻影」とは、芸術によって生みだされるイメージがいかに人々に影響をあたえるのか、また、歴史的な視点における芸術の役割や美の定義とは何なのか、という問いかけを含意している。

 第二弾(2008年1月16日~2月16日)は、第一弾と同様、防衛省の協力により出品された戦争画と現代作家の作品から構成された。戦時中、藤田嗣治、宮本三郎などと肩を並べた中村研一の戦争画《神風特別攻撃隊の海軍機の活躍》を紹介し、それに加えて細江英公の〈死の灰〉シリーズの写真作品と映像作品《原爆とへそ》(出演・土方巽)や中西夏之の50年代の絵画作品、横尾忠則の最新絵画作品5点、「9.11」を体験した太郎千恵蔵の最新大作絵画、トマス・デマンド暴力やテロをメタファーとした大作写真作品2点、ダレン・アーモンドの「表象不可能とされたアウシュビッツ」の映像作品とオブジェが出展された。またフランスの哲学者で「事故の博物館」展(2003年・カルティエ現代美術財団)の企画や『純粋戦争』、『パニック都市』などの著者として活躍中のポール・ヴィリリオが、本展に対する深い理解と賛同を表明し、書き下ろしのテキスト「トーチカ」によって参加した。

 第三弾(2009年1月16日~2月5日)は、各作家の作品を通じて「人間存在」の本源的な意味をも問いかけていくものとなった。出品作家は、藤田嗣治作品《重爆》(防衛研究所蔵)をはじめ、横尾忠則の戦争の記憶を絵画化した新作(連続参加)、宮島達男のアウシュビッツ行きの列車に積み込まれたLEDが明滅する作品古井智「核の歴史」をテーマにした写真及び絵画作品、山口晃の戦争擬画、佐々木加奈子のもうひとつの「アンネの日記」をテーマとした写真作品、大庭大介の彫刻作品《最終兵器》など世代を越えた多彩な作家を交えた展開であった。

 本展の第四弾は、「実際の戦争」と「イメージにおける戦争」といったテーマを対比させながら、現代における戦争の定義を探求するものである。戦中少女期を過ごした草間彌生戦争三部作(絵画作品)や杉本博司旭日照波(昭和天皇像)とA級戦犯などの写真作品、建築家磯崎新の流木や石油缶で構成したフレームデザインによる横尾忠則の陶板の大作戦後(廃墟と化した東京)など戦争の記憶をテーマにした作品が出品される。一方、戦後世代からロシアのアーティストユニットAES+F暴力やエロスに満ちた世界像を表象した写真作品やイギリスのターナー賞受賞作家マーティン・クリードの「芸術の存在理由」をテーマとした文字によるコンセプチュアワーク、Mr.の少女たちによるサバイバルゲームをモチーフにした《誰も死なない》(映像作品)、名和晃平の非物質化した戦争兵器をテーマにした《PixCell-Toy-Machine Gun》、そしてヤノベケンジの原発事故後のチェルノブイリをテーマにした作品、さらに本学の戦闘機プロジェクト情報デザイン学科学生3人のアートユニット)による「日常の中の戦争」をテーマにした作品など平和な国「ニッポン」に内在している「終わらぬ戦後」や戦争を知らない世代の若者の「心理的戦争状態」を浮かび上がらせ、私たちの世界のパラダイムが急激に変化していることを認識していこうとするものである。

 「戦争と芸術」というテーマは、本学の「平和精神」に基づいたものである。あまりに深くて現代的なテーマであるために、本展覧会がシリーズ化したことは必然であると考えている。

キュレーター 飯田高誉